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【連載】深い川
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第1話 第2話
第3話 第4話
第5話 第6話
第7話 第8話
第9話 第10話
第11話(最終話)
全11回(確定)の連載になります。

この連載、実際の男女の会話がベースになっております。
それでは、皆さま、どうぞお楽しみください。


第1話

  わが待たぬ 年は来ぬれど冬草の
      かれにし人は おとづれもせず
                      (凡河内躬恒)


新しい年の、上弦の月の頃。

仕事を終えて少し疲労していた私は、夕食時だったけれど、
コーヒーの香りに誘われて、カフェの、自動ドアの前に立った。

「あれ?!」

聞きなれた声に振り向いた。大学の頃からお世話になっている先輩の顔。結局私たちは、近くの居酒屋に向かった。

「この前はありがとうございました。」
「どうだった?」
「面白かったですよ。」

先日先輩がくれた本の感想。

「男性って・・・三つのタイプに大別できるんですね。」

偶然の再会で、本の内容は漠然としていたけれど、
その話題で私たちは結構盛り上がっていた。

「そうだ! F先輩はあのタイプの中のどれなんですか?」

沈黙があるかもしれない、その微妙な間が何だか気になって、私はビールを飲んだ。

「自分では「●●タイプ」だと思っているけど。」
「えっ!」
「・・・・何?」
「せ、先輩、素直ですね。」

むせそうになった。
そんなに簡単じゃないよ、とか言って、答えてくれなければよかったのに・・・。軽い冗談だった。何だか変な流れになっちゃった。

おまけに先輩は「●●タイプ?」。知らなかった。知らなかった〜!!
先輩の秘密を覗いた気がして、ちょっとバツが悪くなった私は、冷静さを保ちつつ、話題をずらした。

「一般的な男性の三タイプ、あの分けかた・・・先輩どう思います?」
「大まかに言うと、当たっていると思うよ。」
「へえ〜」
「それが全てではないというところも当然あると思うけど・・・」
「じゃあ、要は男性に好かれたければ・・・」

私は、クールな顔をつくった。

「あの3タイプを見分けて、そのタイプに合わせた女性像を創りあげる事に成功すれば、私にもチャンスあり、ですかね?」
「うん、そう思うよ。」
「よしっ!」

帰ったら分析しようっと!・ ・・と思いもしないで、既に理想の女性になった気分の私は、ただの酔っ払い。


「男性と女性の間には・・・」

酔いにまかせて、言葉を続けた。

「深い、ふか〜い。まるで谷底のように深い川があって、決して渡る事のできない暗さを感じるんですよ。 F先輩、どう思います?」

                                    
つづく
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第2話

  よそにのみ 恋ひやわたらむ しら山の
     雪診るべくも あらぬわが身は
                      (凡河内躬恒)


「・・・ちょっとよく分からないんだけど、暗いって、怖いってこと?」

「うーん・・・。
それもある意味、当たってるかもしれないんですけれど、それだけじゃないなあ。
・・・例えが上手くできないんですけれど。」

言葉を選びながら、様々な光景が浮かんだ。

自分の事、友人たち、身内の男女関係。
好かれたい、愛されたいと願いつつ、その思いが叶わない女性たち。

結婚していようが、いなかろうが、
離婚していようが、彼氏がいようが、いなかろうが、
そういうものは、関係ない。

女性が、闇の底の思いを言葉にする事は少ない。

「・・・暗いという例えは、ある意味『無』というイメージを言いたかったんです。絶対に橋がかからない、確率ゼロの世界というか。」

微妙な空気をそらしたのはよかったが、また別の意味で、
微妙な空気にしてしまった自分を後悔した。

ああ、今日のB型は最低の日だって、テレビで言ってたっけ。
普段は気にも留めないB型の運勢がやけに気になりだした。

仕方がないから、元気にビールを追加して、
あたかもさっきの話題は他人事のような顔をする。

やっぱり帰ったら、あの三タイプしっかり分析しようっと。

第一、男女間の事なんて、語ってどうにかなるものじゃない。
自分の事も、他人の事も。
幸せになったもの勝ちなのよ、人生は。・・・・・多分。

「『無』というのがピンとこないんだけど・・・。絶対に橋がかからない、これを言い換えると、女性の気持ちを分かってくれる男性は世の中にいないってことかなあ?」

「そう。それ!」

その言葉を放った瞬間に、違う部分もあるかも?と疑問がよぎったが、先輩の言葉も外れてはいないと感じた。


F先輩とは学生時代から、友達のように仲がよかった。
最初、周囲は私たちを付き合ってる、って思っていたらしい。
先輩に同じ部内の彼女ができてからは、ただの友達関係だと周知された。
そして二人はめでたく結婚。
そうそう、奥さんはひそかに私に嫉妬してたって、二次会のあとにこっそり教えてくれたっけ。

友人たちは、F先輩と私の関係を「不思議な関係」という。

結婚式の出し物の話し合いの時、友人の多くは私に聞いてきた。

「先輩の事、好きだったんじゃないの?」

                                       つづく
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第3話
だ・か・ら、

深い川なのかもね・・・

それは別に男女だけでなく。
親子だって、
兄弟だって、
親友だって。

深い、深い川が流れてる。
決して渡れない川が。

確かに私と先輩はずっと、お互いの彼氏、彼女の事で相談し合ったり、
励ましあったりしてきた。

F先輩ときたら、自分が苦しい時しか電話してこないし。って、私もそうだっけ。

だからこうやって、独り身の私を心配してくれる気持ちはよーくわかる。
頼めば誰かを、紹介だってしてくれるだろう。

でもね。やっぱり深い川なわけ。


アーケードを歩きながら、私たちは駅へと向かった。
冬に合わせた、ちょっと前の流行歌が流れる。

「うわ、『粉雪』。切ない。」
「ハハ、切ないなんて感じるんだ?」
「なーに言ってるんですか、私は生まれた時からずーっと寂しいですよ。」
「おおっ、意外。」
「ほら、深い川が流れてるでしょ。」

私たちは陽気に笑いあった。


先輩とは途中の駅で別れ、家路へ向かう。
終電のギュウギュウ詰めから開放されると、外の空気が凍りそうで足を速めた。
まだ、頭の中で『粉雪』が繰り返される。

私は躬恒を思い出した。

    雪降りて 人もかよはぬ 道なれや
      あとはかもなく 思ひ消ゆらむ
                       (凡河内躬恒)

消えてしまえばいい。そんな思いを抱いているのは私一人じゃない。
自分が女性だったのか、男性だったのか、それすらわからなくなる。
心の両岸に男の私と女の私がいる。

私の中の天の川。
一年に一度、いや、一生に一度
その川を渡って、私たちは再会するだろうか。

雪が降ってきた。次から次へと落ちてくる。足を速めた。

この寂しさは、男女のさびしさだけじゃない事に気がついているけれど。

私の中の深い川の両岸に立つ、決してめぐり合うことのない男女。
世の中のさびしさは、なぜだかそれと、似ている気がする。

先輩のさびしさも、
私のさびしさも、
友達のさびしさも。

親のさびしさも、
他人のさびしさも
みんな、みんな。

せめて、この雪と共に消えて
暖かい春がくればいいのに、と願う。

寒い、冷たい季節を越えて、春を待とう。
この川を渡ることはできないと、覚悟して生きればいいだけの事だから。
だから、せめて、暖かい春を待とう、そう思った。


                                        つづく
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第4話
    水の面に あや吹きみだる 春風や
       池の氷を 今日はとくらむ
                         (紀友則)


目が覚めると、既に休みの日の太陽が昇っていた。

朝食後、早速、先輩のくれた本を読み直す。

先輩はこのタイプか・・・いやいや、そういう事じゃないよね。
大切なのは、男性3タイプの分析なのだから。

「・・・・・。」

私は、3分後、先輩の携帯にメールを打った。

「昨日はご馳走さまでしたm(_ _)mありがとうございます。
早速本を読みました!
でも、これじゃあどうしていいかわかりません(;;)」 送信!


数分後、返信がきた。

「昨日はお疲れさま。まずは水野の理想のタイプを考えてみたら?」

は?理想?
困った。どうして先輩に理想なんて打ち明けなくちゃならないのよ。
いやいや、でもこれは親切。メールしたのは私。
だってこの本の内容だと、当たってるんだろうけれど、どうしようもないよね・・・。

仕方ない。私は文字を打ち込む。
えっと・・・理想は、お金持ちで自分だけに恋してくれる人です・・・あれ???

なーんだ。
結局は男性の動物的な部分にうんざりしても、女性だって現実的な部分はこんなもの。
お互いさまって事か。

やめた!

「考えてみます。」と送信し、コーヒーを飲み干す。


もう、こうなったら、自分の理想を細かく描いてみよう。
変でも偏っててもいいじゃない?
私の一生は、私が決める。

新しいノートを取り出し、私はしばらく考え込んだ。


                                        つづく
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第5話
     ひさかたの 光のどけき 春の日に
       しづ心なく 花の散るらむ
                          (紀友則)


あれから、かなりの時間が過ぎた。

「考えてみます」

そんなメールを先輩に出したあと、私は、沈黙の世界に入り込んでしまった。

桜の花びらが、ベンチに落ちる。
開花情報が出てまもなく、それはもう散り始める。
なんという瞬間だろう。一秒さえ止まらないこの世。

私の理想の男性とは?
そう、あの日、ノートにすぐさま書いた言葉。

○ お金持ち
○ 自分に恋をしてくれること

そこまではよかった。
そこまでは、スムーズに進んだのだ。

しかし、次の瞬間、ゆらぎが起こった。

漢字をじっと見つめていると、それが本当に正しいのか?
まるでそれが間違っているかのような、不思議な疑問が次から次に湧き起こってくる。

なんて、有名な作家がどこかで書いてたっけ。
夏目漱石だった気がする。 いや、違った?

私も、その現象に陥ってしまったのだ。
「漱石現象」とでもしておこう。

○ お金持ち
○ 自分に恋をしてくれること

この二つ、どちらが優先だっけ。

     お金持ち > 自分に恋をしてくれること

いやいや。

     お金持ち < 自分に恋をしてくれること

だっけ?

いや、まてよ。

この二つの項目はそもそも、これでいいんだっけ?
私の本当の理想って、こうだっけ?
今までの彼氏ってこれに当てはまってたっけ?
あれ?私の好きになる基準って、なんだっけ?

ぐるぐるぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる。

『我輩は猫である』状態になってしまった。


その日の休みはそれで終わり、翌日もまた考えた。
するとまた、あの「漱石現象」が起こる。

かくして、せっかくの休みを、脳の無意味な活動で完全に疲労させてしまった私は、日常へと復帰しなければならない策として、その現象を完全に封印してしまった。


                                        つづく
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第6話
     わが宿の 花見がてらに 来る人は
       ちりなむのちぞ 恋しかるべき
                     (凡河内躬恒)



そうこうしているうちに、桜も散ってしまい、少し焦り始めた。

「漱石現象」は、今や、先輩との不思議な関係も重なって、もう押さえていられない。


大体、なぜ先輩はこの本をくれたんだろう?

「水野が美人になれるように」なんて言っちゃってさ。


そのさくら色の表紙を、じっと見つめた。





ふと、閃光のように、脳裏にF先輩との思い出が蘇った。

部活の仲間たちと、浜辺で満天の星を見上げた、あの夏の夜。


その日は、先輩の好きな人を教えてくれるというので、
私たちは二人きりで話しができる、一瞬のチャンスを待っていた。


仲間が花火の準備を始め、バラバラに動き出したその時、
先輩がこちらへ歩いて来た。


「あ、先輩! 早く早く! 教えて下さいよ〜」


「う、うん。 僕の好きな人は・・・・」


                                        つづく
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第7話

その瞬間、私は全てを理解した。

数年前の「あの一言」に、答えがあったのだと。

そしてまた、あの後の、私たちの会話には、深い、深い川が流れた事を知った。

その時の川は、私にだけではなく、先輩にも流れたと言ってもいいだろう。

そして今、その川が私に向かって迫ってきた。



・ ・・・・・・・。



深い、深い流れに飲み込まれそうだ。

その川は大きな轟音をあげて、まるで津波のように、私の身の丈を越えた。

そして全てを包み、何もかもを消し去ってしまった。



     川の瀬に なびく玉藻の み隠れて
       人に知られぬ 恋もするかな
                        (紀友則)


                                        つづく
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第8話

     
身の憂きを 言はばはしたに なりぬべし
        思へば胸の くだけのみする
                           ( 伊 勢 )


翌日の仕事は、散々だった。

・・・・・だめだ。

飲みかけのコーヒーカップを片手に、給湯室へと駆け込む。


理由はわかっている。

あの本のせいだ。

F先輩があんな本をくれるから。


「水野さん?」
同僚が後ろから、様子のおかしい私に気付いて声をかける。

「あっ・・・。 はは、何だか具合が悪くて・・・」
思いがけず、涙まで出る。

「そんなにひどいの? 熱もあるんじゃない? 帰って休んだら?」

具合なんて、悪くない。
こんなことぐらいで仕事ができないなんて。
これからもずっと、この仕事で生きていくと決めている、この私が。

それなのに。

どんなに自分で自分にムチを打っても、
私の心が反応しなくなってしまった。

今までの私は、どこに行っちゃったの?
元気な私よ、出てきて!!

・ ・・・・・・。

返事がない。



私は会社を後にし、駅に向かいながら、ぼんやりと考えた。


どうやら、私の体は仕事に来たけれど、
心は、あの川の中に、おいてきぼりなのだ。

私は、深い川で、遭難したのだ。


                                        つづく
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第9話

部屋で男性が、淡々と仕事をしていた。
時々、思索にふけっている。


ここはどこだろう?


日本なのだろうか?


私には、その男の人の心の中がわかるような気がした。
というより、まるで私だった。


もちろん、私は女性だ。


でも、社会の中で仕事をするとき、男性的な気持ちになっている。
まるで、男性になってしまった錯覚さえ、覚える。


その、男性的気持ちで生きている私が今、本当の男性になって、目の前にいた。


じゃあ・・・それを見ている私は誰?


私は、ゆっくりと首を下に向けて、自分を確認する。


女性だ。


いや、今までも女性だったじゃないか。


でも、違う。今の私は、私ではない。
今までの私は、あの男性―――彼の中にいるのだから。


ああ、なんてことだ、また「漱石現象」か。



ぐるぐるぐるぐる、ぐるぐるぐる。



いつの間に入れ替わったんだろう?


私は男だったのに。いや、少なくとも、心は男だった。
今の私は何?


男?


女?



・・・・誰?




・・・・・ワタシハ・・・・・ダレ?






     吉野河 いは浪みたかく 行く水の
       はやくぞ人を 思ひそめてし
                              (紀貫之)


                                        つづく
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第10話

     手に結ぶ 水にやどれる 月影の
       あるかなきかの 世にこそありけれ
                              (紀貫之)


世界が180度変わるなんて、まず、ありえない。
でも、自分が変わることはあるかもしれない。

それは親によって、恋人によって、友人によって、配偶者によって、子どもによって・・・

自分自身の力だけでは、とうてい変われないものを、
他人はいとも簡単に変える力を持っている。

私は、F先輩から魔法をかけられたのかもしれない。


今の自分に、覚えがないわけではなかった。

むしろ、懐かしく、何ものにも変えがたい親しみのような、深い情感がわいてきた。

なぜだろう。涙が止まらない。



そうだ。

今の私は、逢いたくても逢えなかった、己自身ではないか。

天の川の向こう岸にいた、もう一人の、自分。


今までの私は、男性側にいた。

そして、川の向こう岸にいる、女性に恋焦がれていた。


逢いたかった。

でも、逢うすべがわからない。

それに気がついてからの何年もの間、その深い川に、橋はかからなかった。


しかし、今は違う。

あっという間に、男女が入れ替わってしまった。


何だろう?

湧き起こるこの感情は。


あんなに執着していた、仕事はどうでもよくなった。

ただ、目の前にいる男性の幸せを祈りたくなった。

ただ、愛しい気持ちになった。

そして、その気持ちだけで、一生を生きていけるような気持ちにさえなる。


お金が必要だから、働かなきゃ。

毎日の生活はどうなるの?



どんなに自問自答しても、心が揺るがなかった。


ただ、愛しい人の幸せで、自分は幸せになった。


それが全てだった。



     よひのまも はかなく見ゆる 夏虫に
       まどひまされる こひもするかな
                              (紀友則)


                                        つづく
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第11話(最終話)

     つつめども かくれぬ物は 夏虫の
       身よりあまれる 思ひなりけり
                              ( 読人不知 )


しかし、穏やかな時間は、そう長くは続かなかった。

突然、私と一体だと感じていた男女が遠のいた。

・・・・・。


私は、自分の心の中の映像をじっと見つめる。
男女は共に手を取り合いながら、静かに川の底に沈んでゆく。

今までの共感が嘘のように、
その男女はもう、
他人のような距離感をもって、深い川の中に消えてゆくのだ。


私はただ、それを見つめるしかなかった。

その時、声にならない己の声。

そして、静寂。


どうやら、私はまた、一人ぼっちになってしまったらしい。



ふと気がつくと、もう遅い時間だ。

ワインをもう一杯だけ。


今になると、あの男女のどちらもが、私のようで、私ではない気がした。

何と曖昧な世界なのだろう。まだ漱石現象にとりつかれているのか。

私はこの世界に取り残されている。

そう思うと急に寂しくなった。


それと同時に、

この世界に、私の運命の男性が必ず存在する、

そして、必ず出会える、

そんな気持ちになった。



携帯が鳴る。

先輩からのメールだ。

「蛍見た?」


私はその問いに答えず、返信を打つ。

「理想の男性、考えました♪ 七夕の日に出会う人です(^▽^)なんて」


こんな理想像に驚いたのか、返事がすぐにこない。

あまりに夢見がちなメールに、我ながらニヤッとする。

何だか楽しくなった。


七夕の日に出会う・・・それは運命。

きっと、蛍の導きによって、私たちはこの現実世界でもう一度再会する。

理由無く、そんな事を思う。



明日もよい一日ね。

部屋の電気を消して、カーテンを開けた。


見つけてね。

命短い蛍のように、人の一生もまた短いけれど・・・・。

私はここにいるわ。


月にそっとつぶやくと、私はワインを飲み干した。



                                       おわり
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 <著者紹介>
   柿下 綾 (かきした あや) 先生
     算命学やタロット占いにて、多くの方の人生の指針についてアドバイスを
     されています。現在、九州 福岡を拠点にご活躍中です。

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